日本中の本屋を侵蝕中……?
これは第四境界が仕掛ける
新しい体験――“読む”ARG
本書籍には、2作品が収録されている。ARG『人の財布』とは別の物語となる『人の財布~高畑朋子の場合~』と、新規書き下ろし『祭歌の国ハルヴァニア』の2作だ。“読むARG”として新たな体験に挑戦した本書はどのように制作されたのか。謎制作を担当した音納夜、画像制作を担当した本江真実に、その舞台裏を訊ねた。
インタビュー
謎制作部門 音納夜
担当された箇所について教えてください
『人の財布~高畑朋子の場合~』の主人公が物語の中で体験するARGの一部と、プレイヤーが体験するARGの謎制作などを担当させていただきました。
はじめに藤澤から小説を読ませてもらったとき、すぐに物語に引き込まれ終始先の展開にドキドキハラハラしました。既に作り上げられた世界の中で謎をどう形にしようか、と頭を抱えつつもやりがいを感じたことを覚えています。
謎はどのようにして作られたのでしょうか?
物語の展開は決まっていたので、まずは謎が必要となる箇所と要件を確認しました。前後関係や流れを踏まえてチーム内で案出しを進め、ばちっとピースをはめていくような形で制作を進めたことを覚えています。一方で、チームで閃いた謎を藤澤に提案することも。その結果、小説に登場する財布の中身が増えたり、文章が一部変わった部分もあります。チームが一丸となって物語をより良くしていく様子が実感できた瞬間でした。
そして、探偵の伊澤(※1)とメールのやりとりができるパートの謎制作ですが……たいへんでした。これもまたチームで何度も話し合い、最終的には最適解を見つけられたと思います。おかげさまで伊澤はたいへん愛されており、メッセージのやりとりができた喜びの声を多くいただきました。

本作は、「初の小説型ARG」の名にふさわしい、小説媒体ならではの体験が込められています。ぜひ、実際にお手に取ってお楽しみください。書籍のデザインが秀逸なのはもちろん、紙の触り心地が良いことも注目ポイントです。
(※1)ARG作品の『人の財布』にも登場する人物。本書では、書籍特典である名刺に書かれたメールアドレスを用いて、実際に伊澤とメールのやり取りを行うことができる
インタビュー
画像制作部門 本江真実
担当された箇所について教えてください
小説のビジュアルまわりを担当しました。
本プロジェクトにおける画像制作は、絵を描くというよりも、文章の中にある情報を拾って整理し、それを成立する形にしていく感覚に近かったです。日付や行動の順序、場所に関する記述などを一度すべて書き出し、紙の上で整理しながら構造を組み立てていきました。
特に思い出深いのは、『祭歌の国ハルヴァニア』に登場する間取り図です。「カーテンが床に擦れていた」といった描写や、声がどの部屋まで届いたかといった記述を手がかりに空間を推測していきました。一度形にしては別の記述と照らし合わせて調整し、という作業を繰り返し、文→空間→図というイメージをひたすら反復して作成しています。

また、保険証や診察券など財布の中に入っているアイテムは、実物を制作してから撮影しました。画像を加工してそれっぽく見せることもできましたが、リアリティを追求するため、実際に手を動かして作ることを藤澤と相談して決めました。
制作物は、チームで何度もブラッシュアップをして形にしました。リアリティだけでなく、その画像に不気味さを感じられるか、読者の心をより動かす表現になっているか……物語を作るプロの視点とはこういうものなのかと、その基準の高さに驚きながら必死にこたえていきました。
企画に参加してどうでしたか?
おもしろかったです。文章の中にある情報をどう拾って、どう形にするかを考え続ける時間は大変でもありましたが、パズルを解いているような感覚で楽しんで取り組めました。
特に印象に残っているのは、自分が描いた「ハルヴァニアの少女」の絵が、実際にサイトとして立ち上がった瞬間です。

作中に登場するWebサイトは、小説の発売前に実際のネット上で公開され、話題となった
紙の上で整理し試行錯誤しながら作っていた画面が、小説の中だけでなく別のメディアに広がっていく感覚は、今回の制作ならではだったと思います。
また、SNSでの反応を目にしたときには、ちゃんと誰かに届いているんだなと実感できて嬉しかったです。「少女の顔が怖くて見られない」という感想があり、それはまさにそう感じてもらえたらいいなと思っていた部分だったので、意図がまっすぐ伝わったことも印象に残っています。
普段小説を読まないが第四境界の作品が好きな人、小説を読むが第四境界の作品を体験したことのない人、どちらも楽しめる作品になっています。この小説で新しい物語体験の扉を開いていただきたいです。




