Works実績

// 代替現実ゲーム(ARG)

Project:;COLD 2.0 ALTÆR CARNIVAL

担当範囲
企画・脚本・制作
サービス期間
2024.1.15~2024.3.31
企画・制作
ストーリーノート×バンダイナムコエンターテインメント×マレ
ジャンル
次世代型ARG
展開媒体
YouTube、Discord、X
公式サイト
https://www.project-cold.net/

「彼女を救えるのはアナタだけ」
現実と仮想が交錯する
視聴者参加型デスゲーム×ARG

『1.8』から2年の月日を経て、満を持して発表されたシリーズ第3作目。
物語の舞台は、デスゲーム。YouTube上では、毎週生配信の番組が行われ、多くのユーザーが「推し」の少女のために謎解きに挑んだ。
歴代最大規模の謎解きと、挑戦が盛り込まれた本作。
監督補兼シナリオ担当の今泉麻奈美と、ミステリーデザイン担当の原翔馬に、制作の裏側を訊ねた。

インタビュー
監督補&シナリオ 今泉麻奈美

シナリオ制作中に、大きく変更した点を教えてください

制作段階に入ってからは、特になかったかもしれません。というのも、今回の作品は、大枠以外の部分は極めてリアルタイム性が高く、事前に用意しきったものを出していくというよりは、状況に合わせてその場その場で必要な物語を作っていくことが多かったんです。デスゲームの結果を見てから次週の展開を考えたり、謎解きの内容に合わせて人物を増やしたり……。大きい変化がドカン!というよりは、流動的な変化が多い作品だったと思います。

シナリオに付いた演出で、印象に残ったものを教えてください

一つ選ぶなら、処刑タイムです。デスゲーム配信中、弊社の中心メンバーはスタジオでアシスタントをしていたので、落ち着いて各配信を見られる状況になかったんです。そんななか、一息ついた気持ちで見られる処刑タイムは、いろいろな意味で心に沁みました。イアリンさん(※1)のお力のおかげで、少女たちの姿は、最初から最期まで印象的で見ごたえのあるものになったと思っています。物語の都合上、優勝者の処刑タイムは公開されませんでしたが……、そちらもぜひ、本作ココフォリア版(※2)にてご覧いただけたら嬉しいです。

処刑タイムのワンシーン。デスゲームのアーカイブは、YouTube内アルター・カーニバル公式チャンネルで全回を視聴できる。

(※1)有限会社イアリンジャパン。『Project:;COLD』シリーズの映像、ビジュアル制作を初代から担当していただいている。

(※2)ココフォリア版『Project:;COLD case.674 ALTÆR CARNIVAL』。本作の物語を、パソコン、スマホで体験できるアドベンチャーゲーム。

シナリオを完成させるまでに特にこだわった点を教えてください

本作には、登場人物が生配信を行うパートがありました。ひとたび配信が始まれば、そこはもう独壇場。アドリブの配分も多かったため、キャストのみなさんの負担が減るよう、各資料の準備にはかなりこだわった……つもりでしたが、今見返すと全然足りていなかったように思います。それでも全配信をやり遂げ、少女たち&天の声に魂を吹き込んでくださったみなさんには、本当に感謝しかありません。

作品の中で特に気に入っているシーンを教えてください

かえって雑に聞こえそうですが、どのシーンも特別な存在です。『Project:;COLD』のシナリオは、一般的なゲームのそれと違って、書き上げたらそれで終わりではない───ユーザーさんにお披露目して、ユーザーさんが参加して初めて物語として完成するので、いつも予測不能な展開が加わって面白いです。もはや代名詞となった「フルカスタム(※)」はまさにその筆頭で、某衣装を着込んだ方が続々とやってくる姿は、本作で見られてよかった光景のうちのひとつです。

(※)P'PARCOで行われた「八本木大介サイン会」にて、ユーザーが行った変装。ユーザーは、作中の要人になりすますため、【黒いマスク、サングラス、花束】を身につける必要があった。(参考:ストーリー「謎のクリエイターのサイン会に潜入せよ」

ファンの受け止め方について、印象に残ったことを教えてください

シナリオ担当としては、登場人物への愛の深さでしょうか。この企画を始める前、「デスゲームが始まるまでにどれだけ参加者を好きになってもらえるか」が肝になると思っていました。ゲームの仕組み上、まず視聴者に5人を好きになってもらわないことには始まらないので……。いろいろな準備はしつつも不安はずっと残っていましたが、いざ始まってみるとそれぞれに根強いファンがついてくださって、かなりホッとしたのを憶えています。また、本作では、上記の5人以外の人物もたくさん登場するのですが、彼らのこともよくよく見ていただけて嬉しかったです。

「いろいろな準備」のひとつ、少女たちのチャット。デスゲームが始まるまでの40日、少女たちがどのような生活を送っていたかを観測することができた。現在も、アルター・カーニバル公式サイト公式Discordにおいてログを閲覧できる。

プロジェクトの最中に成長を感じたことを教えてください

本作では、監督補というポジションを務めたこともあり、収録からリアルイベントまで、本当に多様な分野の仕事に関わらせていただきました。当然、不慣れなことばかりで、最初から最後までずっとドタバタしていた記憶があります。

それでもなんとかやりきれたのは、初代からシリーズを支えてくださっている関係会社のみなさんはもちろん、社内チームメンバーの尽力のおかげでしかありません。「これできるかな? でも大変そうだなあ……」と悩んだとき、「やりましょう!」と言ってくれる人たちがいてくれたことは、本当に頼もしかったですし、ありがたいことでした。

そういうわけで、自分の成長がどうこうという感覚はあまりないのですが、今回の企画を通して、「ここまでなら自分でもできる」というラインを把握できたことは、大きな収穫だったと思います。

インタビュー
ミステリーデザイン 原翔馬

謎解き制作中に、大きく変更した点を教えてください

一番大きく変わったのは八本木先生のサイン会ですね。これまでの『Project:;COLD』シリーズではできなかった、現地に足を運ばなければ解けない謎を作りたいということは、総監督の藤澤と常々話していましたが、当初の企画書にはサイン会の「サ」の字もありませんでした(笑)。紆余曲折あり、サイン会を開催することが決まった後も、どうすればより面白い体験になるのか、直前まで考えていましたね。

謎解きについた演出で、印象に残ったものを教えてください

ALTÆR CARNIVALで使われていたRTAS(リアルタイム・アンサー・システム)は本当に革新的でした。謎の力だけでは数千人の守護者の熱狂を生み出すことは間違いなくできなかったので、RTASを開発してくださったイロコトさん(※)には頭が下がる思いです。

RTAS使用中のワンシーン。コメント欄に打ち込まれた回答を検知し、画面に現在の進捗を反映することができた。

(※)株式会社イロコト。『Project:;COLD』シリーズのWeb制作まわりを初代から担当していただいている。以下は、RTAS制作の裏話が書かれたブログ記事。https://irokoto.co.jp/blog/20240617/post-46

謎解きを完成させるまでに特にこだわった点を教えてください

なるべく多くの方に「自分にもできることがある」と思っていただけるよう、体験の設計と難易度の設定には細心の注意を払っていました。例えば、大量に並んだ文字の中で見つけた言葉を入力したり、LINEでランダムに送信される問題を入手したりといった、謎解きが苦手だったとしてもできることを組み込むという点は特に意識していましたね。

作品の中で特に気に入っている謎解きを教えてください

「HIGH conscious lab.」というオンラインサロンの会員制フォーラムにアクセスするための謎解きですね。100問という膨大な量の謎を、眞形さん(※)と社内のプロジェクトメンバーの3人だけで制作していたので、本当に大変でしたが、どの問題も面白く仕上がっていると自負しています。当時はたったの3時間で突破されてしまいましたが、まだすべての謎を解いていないという方は、ぜひじっくりと時間をかけて挑戦してみてください。

「HIGH conscious lab.」の謎解きページ。当時は、LINEで入手した問題の正答を打ち込むことで、ページに問題画像が追加されていく仕組みだった。

(※)『Project:;COLD』シリーズを支えるミステリーデザイナー、眞形隆之氏のこと。

ファンの受け止め方について、印象に残ったことを教えてください

謎については、「文句なしに、これまでに見た謎解きの中で一番美しい問題です」とまで言ってくださる方がいて、本当に嬉しかったです。それ以外で特に印象に残っていることといえば、八本木先生への反応ですね。まさかファンアートが描かれることになるとは、サイン会当日まで誰一人予想していませんでした。みなさんの反響次第では、いつか八本木先生の個展が開かれるかもしれませんね(笑)。

プロジェクトの最中に成長を感じたことを教えてください

今作は『Project:;COLD』シリーズ最大規模のボリュームで、企画段階では本当に作りきれるのだろうかと不安に思っていました。しかし、藤澤をはじめとしたプロジェクトメンバーと話し合うなかで、一人では決して思いつけなかったようなアイデアが生まれて、最終的にはこれほどまでにバラエティ豊かな謎を作りあげることができました。

またALTÆR CARNIVALが開催されていた1ヶ月間は、配信が終わった後、個別配信のアーカイブをすべて確認して、翌週の問題を調整するということを毎週のように繰り返していたので、「数千人が同時に挑戦する謎解きを作る」という能力は格段に成長したと思います。今後もしそのような謎解きを作る機会があれば、みなさんをびっくりさせるような謎を作りたいですね。