「ここから先は“いわく”つき」
コインロッカーの残置物が紡ぐ
人間模様と「いわく」の物語
第四境界初のリアルイベント「東京侵蝕2025」実施企画のひとつ。
ユーザーは、「人々に忘れ去られたアイテム」───「残置物」の展示イベントを通して、あるコインロッカーに秘められた「いわく」に迫ることができた。物語のキーとなるのは、展示物の関連テキストが読める「データベースサイト」。「東京侵蝕」開催当時、会場には本物のコインロッカーが設置され、実際に扉を開いてアイテムを観察することができた。
アトラクション性の高い遊びが好評を博した本作。制作の裏側を、監督の今泉麻奈美に訊ねた。
インタビュー
監督・コンテンツ制作 今泉 麻奈美
企画誕生の経緯を教えてください
上の説明にある通り、本作品は「東京侵蝕2025(※1)」実施企画のひとつです。当初は「なんらかのアイテムを陳列するイベント」をやろうと話していたのですが、第四境界メンバーで「リアルイベントで楽しい体験とは何か?」を突き詰めていくうち、「自分の手でロッカーを開き その中身に自ら出会う体験」をメインに据えることが決まっていったと記憶しています。
目指した方向性は、「ホラーというよりオカルト」&「謎解きというより読み解き」。他企画(※2)との差別化を考え、大枠をそのように決めたところで、「残置物展」の制作は本格的にスタートを切りました。
(※1)第四境界初のリアルイベント「東京侵蝕2025」のこと
(※2)本作品の企画当初、すでに概要が固まっていた「事故物件鑑定士試験」「かがみの特殊少年更生施設 令和7年度 ぼくらの表現祭」のこと。それぞれが「ホラー」「謎解き」の枠を担っていた
本作ならではの特徴は?
「会場ならでは」で言えば、なんといっても「自分でロッカーを開ける」アトラクション性です。なかでも「いわく」つきコーナーでは、懐中電灯を持って暗いロッカーを調査する……という特別な体験ができました。これは、企画当初から考えられていたわけではなく、「東京侵蝕」全体のアートディレクションをしてくださった 雷雷公社さんとの打ち合わせのなかで生まれたアイデアです。おかげで、本企画にはさらにゲーム性が加わり、独特の面白さが生まれたと思っています。


「東京侵蝕2025」会場の様子。新宿&名古屋コーナー(上)と「いわく」つきコーナー(下)には、印象がまったく異なるライティングが施されていた。
本作品には、60種類もの残置物が登場します。セレクトする際に意識したポイントはありますか?
新宿&名古屋の40種については、「ロッカーに忘れられていそうor捨てられていそうなもの」をベースに、その枠を外れた「変なアイテム」群を加えていきました。「いわく」つきの20種については、物語あわせで良さげなものを。
全体的に意識したのは、シルエットやサイズ感、アイテムのジャンルを幅広くすること。残置物展は、アイテムを見た瞬間の第一印象、そこから始まる「物当てクイズ」がメインの企画なので、選定に関してはかなりしっかり時間をかけています。

全国残置物保管協会のメンバーは、かなり個性的でした。キャラクターを作る上で意識した点を教えてください
企画当初から、本作では「群像」をちゃんと描きたいな……と考えていました。今回の「残置物展」は、老若男女だれもが使えるコインロッカーが舞台。サイトのコメントを通して、アイテムを置いていった人間、拾った人間の思想や人生を覗き見てほしいと思い……。なので、登場人物の印象は意識してバラけさせています。本作を遊んだ方が、お気に入りの人物やコメントを見つけてくださったらうれしいです。


本作のデータベースサイト。新宿のロッカー20種は、サンプルページから閲覧&検索ができる。
現地での出来事で、特に記憶に残っていることはありますか?
真っ先に思い浮かぶのは、お客さんが熱心に体験してくださる姿と、ひっきりなしに鳴り響くロッカーの開閉音……。本作は、第四境界総監督 藤澤を「出禁(※3)」にしたうえで、私が制作を担当しました。それもあって、公開前後は本当に気持ちが落ち着かず……。しょっちゅう会場を訪れていたので、今でも当時の光景はしっかり脳裏に焼きついています。
もうひとつ印象に残っているのは、「会場におひとりで来られたお客さん同士が、本作の調査を通して出会い、仲良くなった」というエピソードでしょうか。藤澤がご本人から直接聞いたそうなのですが、「リアルイベントならではだ……!」とほっこりしたのを憶えています。
(※3)「東京侵蝕2025」開催前夜記念番組内で語られたエピソード。藤澤の負担を減らすため、「残置物展」の制作&監督は今泉に一任されていた。なお、同時期に制作された「READY TO STORY Family ties / One Last Free Throw」についても今泉は藤澤を出禁にしている
現在は、物理ファイル付きのアーカイブ版が販売されていますね。イチ押しポイントはありますか?
アーカイブ版のファイルは、本イベントにおける「図録」。ページをめくって「資料感」を楽しむも良し、 特別付録(※4)を活用してザンチスト気分を味わうも良し……なアイテムとなっております。協会の理念に共感し、拾得物の適切な管理、および所有者への返還を目指したい方には特にオススメです。


「残置物Archive」のファイル。2026年3月現在「第四境界史上 最も大きい商品」と言われており、重い。
(※4)アーカイブ版についてくるおまけ「残置物記録簿」「あなただけの残置物ページ」のこと。拾った残置物をリスト化し、ページを追加していけば、自分だけの残置物ファイルをつくることができる
本作品のファンへメッセージをお願いします
「残置物展」は、現在、初代である本作のほかに、『 SILENT HILL f』とのコラボ作品『 SILENT HILL f 残置物展』(※5)をリリースしています。
当初、特にシリーズ化を考えていなかった本作に このようなお話をいただけたのは、ひとえに本作を遊んでくださったみなさんのおかげです。ぜひ、今後とも「残置物展」をよろしくお願いいたします&すべての残置物に光を〜!
(※5)「東京ゲームショウ2025」KONAMI様のブースで初公開された作品。「戎ヶ丘の残置物」を通して、『SILENT HILL f』の世界に「あったかもしれない物語」を描いている。現在はアーカイブ版を発売中。まだ『SILENT HILL f』を遊んでいない方にもお楽しみいただけます

