Works実績

// 代替現実ゲーム(ARG)

Project:;COLD case.613(バンダイナムコエンターテインメント)

CEDEC AWARDS 2022ゲームデザイン部門優秀賞 受賞作品

担当範囲
企画・脚本・制作
サービス期間
2020.11.1〜2021.2.27
企画・制作
ストーリーノート×バンダイナムコエンターテインメント×マレ
ジャンル
次世代型ARG
展開媒体
Twitter、YouTube
公式サイト
https://www.project-cold.net/

史上最大規模のARG
現実と仮想が交錯する
不可逆性SNSミステリー

YouTube・Twitterといった、私たちの日常に深く馴染んだwebサービスを縦断する形で展開された『Project:;COLD』。本作は、とある事件に巻き込まれた少女たちを、インターネットの海からかき集めたヒントを使って救いだす物語だ。キャラクターは各自のSNSアカウントを所持しており、彼女たち自身の思いを綴っていく。

こうした取り組みは、現実の時間と同じ速度で進むシナリオと合わせて、『彼女たちが私たちの世界に実在している』――まるで現実が侵食されていくかのような感覚を、ファンに与えた。何もかも前例がなかった本作の取り組みについて、弊社代表にして本作の総監督の藤澤 仁に、製作の裏側を訊ねた。

都まんじゅう

神奈川県平塚市、六泉ヶ丘高校の生徒会ガールズバンド『都まんじゅう』のメンバーたち。『Project:;COLD case.613』は彼女たちが文化祭に向けてバンドを結成し、リーダーの佐久間ヒカリがTwitterでの広報活動を開始した日から始まった。

インタビュー

ストーリーノートが参加することになった経緯を教えてください。

藤澤:
このプロジェクトはそもそも、藤澤が書き溜めていた企画書の中に埋もれていたものでした。本作のプロデューサーでもある平さん(※1)が、眠っていた企画書を見つけて実現に向けて動いてくれた、というかたちで始まりました。

この辺りの詳しい話は前にnoteにも書いたので、興味がある人はそちらも読んでいただけたらと思います。

(※1)平さん:株式会社マレの平信一氏。ゲームメディア『電ファミニコゲーマー』のTAITAI編集長でもある。本作とのかかわりについては、下記のインタビュー記事でも詳しく語られている。

クライアントとのやり取りで印象に残ったことを教えてください。

藤澤:
このプロジェクトは、開発サイドばかりではなくプロデュースサイドも全体的に若いスタッフで構成されていたので、最初はまあまあバラバラな感じはありましたね。(笑)

だけど、ある程度議論が進んでいくと、「自分たちは誰もやったことがないことにチャレンジするんだ」という感覚が強くなっていって、その辺りから一つにまとまっていったような気がします。一つのチームになってからは、強いチームだったと思います。出力も高かったし、よく議論をする良い協力体制が築けていました。

シナリオを書き上げるまでに特にこだわった点を教えてください。

藤澤:
Project:;COLDは、ARG(alternate reality game:代替現実ゲーム)であると同時に、様々なメディアで物語が展開する「トランスメディアストーリーテリング」でもあるので、そもそもが情報が断片的に与えられる仕組みなんですよ。

なので、メインストリームである動画さえ見ておけば、散らばった情報が自然と補完されるようにしていました。ただ、情報が断片的だからこそ共有に価値が生まれるという側面もあるので、どこまで断片的であるべきか、どこまで補完的であるべきの塩梅については、最後の最後まで悩み続けたところだったと思います。

イマオカオカルト倶楽部

ジャーナリスト・イマオカシロウ氏が運営するオカルト情報サイト、という体裁を取った本企画の関連サイト。都まんじゅうのメンバーたちが巻き込まれる「血の人形事件」に関する様々な情報を得られる。「イマオカオカルト倶楽部」で得られる情報は、「私たちを助けてください」という動画で説明されるため、直接閲覧しなくてもシナリオの理解に支障は出ない。

シナリオ製作中に、大きく変更した点を教えてください。

藤澤:
どのプロジェクトにもつきものですが、本プロジェクトもコスト上の問題からの表現調整は存在していて、登場キャラがどんどん減っていった、というのがありました。

当初は8キャラ想定だったんですが、これが7キャラになり、ほとんどシナリオも完成という段階になってもう1キャラ削除になり……。ミステリーはロジックが鍵なので、こういう手直しが入ると毎回一から全部を見直しになり、それが時間的にも精神的にもなかなか削られたなと思います。

作品の中で特に気に入っているセリフを教えてください。

藤澤:
それはもう、都まんじゅう動画の五番目、『都まんじゅうのみんなへ』の玲子のセリフです。声優さんに声を入れてもらったときは、聞いていて本当に泣けてきました。

都まんじゅうのみんなへ

Project:;COLDが本格始動してから5本目の動画。ボーカル・青島玲子の悲痛なシーンとともに、物語は大きな転換点を迎える。

ファンの受け止め方について、印象に残ったことを教えてください。

藤澤:
いろんな人がいろんな想いで受け止めてくれたプロジェクトだったなと思います。プロジェクトの最後に実施したアンケートは5000人以上の人が回答してくれて、ほとんどの人が続編を希望してくれたことは、とても勇気をもらえた出来事でした。

ファンからのリアクション

『Project:;COLD』はネタバレ歓迎のコンテンツ。本作のファンたち――通称『融解班』は、Twitterのハッシュタグや非公式Discordで積極的に情報交換を行い、都まんじゅうのメンバーを救うために奔走した。

作品のファンの方に一言お願いします。

藤澤:
このプロジェクトは極めて実験的な作品だと自覚しているんですが、それに気づいて応援してくれる人がこんなにたくさんいたことに本当に驚きました。

今は大勢の方から背中を押してもらえている状態なので、その力も借りながら、また次につなげていけたらいいなと思っています。出来る限りやっていきたいと思っていますので、今後とも応援よろしくお願いします。

【オリジナル曲】ユメノワ/都まんじゅう【みやまん】

都まんじゅうのオリジナル曲『ユメノワ』。事件から救われた少女たちが、6人仲良く高校を卒業する姿は、融解班たちの涙を誘った。

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