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2024.04.24

// 採用関連

ゲーム業界を目指す方注目! ~ゲーム業界スペシャリスト座談会~

虎渡 由姫(広報 兼 シナリオライター)

広報担当の虎渡です。
4/2(火)に、三社合同オンライン企業説明会が開催されました。
ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

本記事では、説明会に参加した三社のご紹介と、各社代表の座談会の様子をまとめています。
当日説明会に来られなかった方や、今ご興味をお持ちの方にお届けできたらと思います。
それではさっそく三社をご紹介!

ゲーム業界スペシャリスト系企業

音楽」のスペシャリスト

株式会社ノイジークローク

サウンド制作会社。
(音楽制作・効果音制作・サウンド実装・サントラ制作/販売・イベント制作・著作権活用)

 代表取締役 坂本 英城

▼主な実績
『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』(メインテーマ「命の灯火」)
『クレヨンしんちゃん 炭の町のシロ』(サウンドプロデュース メインテーマ「磁石でいうNとS」)
『龍が如く』シリーズ
『BLUE PROTOCOL』


「物語」のスペシャリスト

株式会社ストーリーノート

物語制作会社。
(ゲームシナリオ/マンガ原作/絵本制作・ARG(代替現実ゲーム)制作)

 
代表取締役 藤澤 仁

▼主な実績
『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』
『Project:;COLD』シリーズ
『東方ダンマクカグラ ファンタジア・ロスト』
『かがみの特殊少年更生施設』


「企画」のスペシャリスト

株式会社アッパーグラウンド

企画制作会社。
(ゲーム企画・ディレクション・プランニング/総合コンサルティング)


代表取締役 上原 利之

▼主な実績
『星のドラゴンクエスト』
『インフィニティ ストラッシュ ドラゴンクエスト ダイの大冒険』
『フィギュアヘッズ』
『ゴブレットゴブラーズ』

各社代表への代表質問

参加者からの質問に、座談会形式でお答えいたしました。

仕事を楽しいと思う瞬間は?

坂本:
めちゃくちゃありますね。

藤澤:
ここにいるのは、みんな仕事が好きすぎる人たちだからね(笑)。

坂本:
楽しいと思っていたら20年経っていたという感じですね。

藤澤:
たぶん共感しづらいと思うので具体的な話をすると、物づくりの過程で「自分が作っていたものが具体的になっていく瞬間」ってたまらないですよね。抽象的な想像を完全に具体的な商品へ進化させていく仕事なので、自分の脳内にあったものがちゃんと具体的な形になって「思ったよりいいじゃん!」となった瞬間に興奮します。

坂本:
僕の場合でいいますと、楽器の収録まで行うことがあるので、最初にピアノを使ってPCに全体像を打ち込んで、そこから具体的に楽器を割り当てたりリズムを打ち込んだりして音源を作り、最後に演奏家の方にレコーディングしていただいて完成、というドラマティックな段階が3つあるので、そのたびに「おーできてるー!」とテンションがあがりますね。

上原:
ゲームの企画でも自分の思った通りにできて「そうそうこんな感じ!」というときもあれば、思った通りにできたのに「やばい、つまらない……」と絶望を感じるときもありますよね。

藤澤:
想像とは違うけど思ったより面白くなった、っていうこともありますよね。物づくりは一直線には進まないから、そういう紆余曲折も含めて面白いなって思います

坂本:
善し悪しを判断するのは自分なので、そのときのコンディションに左右されることもありますよね。

藤澤:
「絶対ウケるわ」って思って世の中に出したら、あんまりウケなかったりもしますしね(笑)。

坂本:
それは今日のトークでもありました(笑)。悲しい瞬間のひとつですよね。

藤澤:
うちの会社だと「人の財布」がそうだったんですが、「これはどうなんだろう」と思って出したものが想像以上に反響よかったりして。「そうか、これでよかったのか……」と思いますね。

上原:
ずっと仕事が楽しいと思えているのは、30歳ぐらいから色々出来ることが増えて来て、色々楽しいなと思ってから早いというか。その感覚値のまま作り続けている、みたいな感じですね。

坂本:
音楽の仕事をしていると、SNSで「あのゲームのあの曲よかった!」という書き込みを見て「やった!」と思うときがあるんですけど、お二人はどういうところで反応を知っていますか?
音楽みたいに「この曲がよかった」というよりはもっと感想が抽象的なんでしょうか。

上原:
ゲーム全体で「面白かった、面白くなかった」というようなざっくりとした感想を目にすることが多い気がします。アーケードゲームを作っていたときは、お客さんが遊んでいるのを目の前で見ることができて興奮しました。お客さんがチュートリアルで首を傾げているの見て、目の前で説明をしたくなるのをグッとこらえました(笑)。

坂本:
ある作品の音楽を担当したあと、公園で子供たちが顔を合わせて実際に遊んでいるのを見てうれしくなり、思わず「それおじちゃんが音楽作ってるんだよ」って近づいたら子供たちが「ママー!!」って逃げていったことがあります(笑)。作り手と遊ぶ方の距離は適切に保つ必要があると、その時勉強しましたね。

藤澤:
たしかに、ドラゴンクエストって基本みんな家で遊ぶので『ドラゴンクエストIX』を電車で遊んでいる人たちを見たときは「おお!」と思いましたね。

仕事が苦しいと感じる瞬間は?

藤澤:
「楽しい・苦しい」という感覚と「好き・嫌い」の感覚って別で、楽しいけどいつも苦しいです(笑)。今日中にこれやらなきゃいけないけど残り時間がないとか、そういうときに限って悩みの相談がきて今日寝れないじゃん、みたいな。辛いけど、別に嫌いじゃないという感じです。

坂本:
僕はあんまり思いつかないです。
苦しいことも楽しいと感じるようになっているのかもしれないです(笑)。

上原:
「やばい、どうしよう」が楽しくなる感覚はあります。自分がディレクターとしてゲームをつくっているとき、気持ちが晴れ晴れしているのは365日のうち2,3日しかない気がします(笑)。あとはずーっと「これでいいのかな」と悩んでいます。

藤澤:
自分もだいたい気が重いけど「憂鬱でなければ仕事じゃない」という言葉に、「はっ!」としたことがあって。こんなに気が重いってことはがんばってるんだなと、自分で自分のことを肯定できる感覚でいますね。

上原:
ディレクターを長く続けている人は、真面目にとらえすぎずに自分の抜け道を持っています。正解のないものを作るうえで「これでいいんですか」って聞かれて「いいんだ」って丸つける作業ってどうしてもストレスを感じるんです。でもそのストレスの分、反動の楽しさが同時に味わえるんです。それの中毒になっています。

参加者から各社代表への個別質問

ストーリーノートは「日本のエンタメ作品の水準の向上が目標」ということでしたが、現状のゲームやマンガの普及率からすると日本のエンタメ作品はトップクラスだと思っています。どのような部分を強化していくべきか?

藤澤:
僕なりに市場を理解しての意見ですが、マンガなどは世界にリードしていた時代があったものの、今もそうだとは思わないです。昔の方がすごかったですね。日本の作品は世界でウケているという錯覚に陥りがちだけど、実際はあまりウケていないと僕は思っています。じゃあどうするべきかというと「世界中の人々が、どういうものを面白いと思うのか理解する」ということが大切だと思っています。自分が好きなものと世界の人が好きなものが違うという感覚を、どれくらい正確に理解し見極めできるか、そういった審美眼を持つことが大切なんじゃないかと思いながら日々やっています。

坂本:
ゲームサウンドに関しても、昔は日本で作ったものを世界中が真似するという時代がありましたが、今はクライアント様からいただくリファレンスとなる作品はほとんど海外の作品になっているように感じます。この現状を真摯に受け止めて、弊社では毎月、国内作品に限らず海外の作品まで含めて、最新のすぐれたゲームのサウンド研究をしています。日本と海外では費用感が違いすぎる、というのも否定しようのない事実ではありますが、日本のゲームサウンドの感覚だけを信じるのではなくて、世界中に目を向けて常に進歩して行かねばなと思っています。

上原:
海外という主語にすると大きいのですが、アメリカ・ヨーロッパ・南米・アジア系……それぞれ物づくりはどこに対してなのか、何を作っているかというのを知らなければいけないです。海外の作品は、出てる数と死んでる数も多いし、その分売れてる数もハンパない。でも「一億円を使ってゲームをつくる」という場合、日本で作る方が効率が良い気がします。費用対効果の考え方が民族的に強いからなのかな、と。それに対して、頭のネジがぶっとんでるエンタメづくりを僕らの世代は「挑戦しなければいけない」と、特に思っています。

物づくりにおいて、リテイクはどのようなことを意識して乗り越えればよいか?
また、社員が悩んでいたらどのようなアドバイスをするか?

藤澤:
まず、リテイクは出来が悪いからされるのではなく、「どうやったらもっとよくなるか」という試行錯誤なので、どれだけ良いものが出てきてもリテイクはされます。リテイクはマイナスでネガティブなものという考えを捨てましょう。徹夜しても、一か月かけても、どんなにすばらしいものが出されても、もっと良くできるんじゃない?という試行錯誤は必ずします。本当にこれ以上なんの向上の余地もないのか問う作業なので、リテイクはされて当たり前です。リテイク=試行錯誤という価値観を持つことが大事です。それが理解できずに、傷ついて辞めていく人もいます。「自分の作品が出したいのに、なんで直されるんだ」という苦しみを持つ人もいるけど、そうじゃないんだよってことを理解するのが一歩目だと思います。

上原:
リテイクは企画づくりでもいっぱいあります。目的や誰に向けたものなのかがズレている場合などが多い気がします。例えばおつかいを頼まれたときに、いくら良いものを買ってきても、頼まれたものと違うものを買ってきたら「それは違うよ」となりますよね。ただ「書かれてないけど、聞いたらこういう考えだった」というものもあるので、自分がリテイクを出すときはどういう思いで作ったのか聞くこともあります。あとは「人格と作ったものは別だからね」という話はよくします。企画という性質上、どうしても自分自身を企画や思いに投影させがちなんですが、人格を否定されてるわけじゃないというのを把握できたらより強くなれると思います。

坂本:
皆さんのおっしゃる通り、リテイクのない仕事はないですよね。そもそも品質が達してないときはリテイクすらなく、もう結構ですと手を引かれてしまうこともあります。リテイクされているうちは評価されているんだなと思います。また弊社では、オーダーと違う仕上がりになってしまうのは、きちんとヒアリングしきれてない自分たちに問題があるという考えを徹底しています。サウンドの発注って専門的なので、車とかを家を買う時みたいに人生で初めて発注しますというお客様が多いんです。なので、こちらからたくさんヒアリングします。サウンドについて説明して「どんな音楽を聴かれてますか?」とか「どんな映画が好きですか?」と好みを聞きます。そうして制作に取り組んだ上でのリテイクは「いっしょに良いものをつくろう」という非常に重要なものなので、あまりネガティブにとらえず、恐れるものではないかなと思います。

藤澤:
作る人の気構えが大切で「これが俺の分身で、これが俺の魂だ!」って考えてしまうと、それを否定されたら生きていけなくなっちゃう。もちろん思い入れをすることは大事だけど、行き過ぎると辛くなっちゃうことはありますね。

坂本:
難しい話で「坂本英城に曲を作ってもらった」という形跡を何かしらで残さないと、誰でも作れるようなものなら次は違う人に頼もう、となっちゃうので、半分はそういう自分にしかできない要素を、もう半分はお客様の満足するものに到達する要素を詰めるように努力しています。妥協しているわけじゃなくて、本当に自分が作りたいもので、良いと思えるものをこの条件の中で達成しています。あんまりお客様の言う通りに作りすぎて「自分が作った意味あったのかな」とか「最初に出したもののほうがよかったかな」とならないようにしています。

AIの目覚ましい発展についてどう思う?業務に活用してる?

上原:
弊社では、AIで何ができるか研究チームを組んでいます。まずはイラストから始まって、モデルを作れるようになって、それがどのくらいの精度のものなのか、それを動かせるのか、というのを作ってみています。AIでそれらを自動的に作れたらかなりのショートカットができますよね。そういう思いからAIソフトって作られてるんですけど、実際に具体的なゲームを作るとなれば「どれくらいのものがいるんだろう?」とか「僕らがどこまでAIに歩み寄ればいいんだろう?」ということを今は考えながらやっています。

坂本:
音楽の世界ではすでにDAWなどで自動作曲機能が付属しているものも出ていますが、いち作曲家として思うのは、AIとはほどよく付き合いながら自分の矜持を持つことが大事なのではと考えています。「AIは人類の敵だ」とか「AIなんて」とか言っていると、あっという間に取り残されてしまって「自分の曲に誰も見向いてくれない」ということになるかもしれませんし。具体的な「ほどよい付き合い方」としては、僕はメロディー・和音の構成・楽曲の展開は作曲家本人が考えるべきもので、それこそが「作曲」の定義だと思ってますが、楽曲のミックスや全ての音圧を一定に揃えるといった作業はAIに任せるという分業は将来的に生じるかもなと思います。以前、あるゲームディレクターさんに「AIに作曲を頼む気持ちはありますか?」と聞いたら「人と切磋琢磨するのがゲームを作る意味だから、そういうことはまったく考えてない」と答えておられました。ですが、現場の中では「これは自分がやる。これはAIに任せる」みたいな仕分け作業がどこも進められているのではという印象ですので、やはり「ほどよい付き合い方」を見つけるのが大事かなと思います。

藤澤:
AIは人類が新しく手に入れた便利な道具だと思っているので、個人的には使うべきだと考えます。ストーリーノートではChatGPTを会社で契約し、全社員使えるようにしています。自分自身も何かを発案しなきゃいけない仕事なので、ちょっと思いついたときに「これどう思う?」とChatGPTに話しかけていますね。完成した文章の要約などにも利用しているので、文章を書くときにChatGPTを使うのは当然のツールだと思っています。発想の肝みたいなものはまだ考えてくれないので、そこは自分の作家性を維持しながら使えるものは便利に使うべきだというのが僕の考えです。

上に立つ人間として気を付けていることは?

坂本:
大ざっぱですが、仲間を信じることですね。上司から「ホントにこの人仕事してんのかな~」と疑われたり話しかけられたりしたら部下としては「がんばろう」と思えないですよね。僕だったらすぐやめたくなっちゃくかも(笑)。なので、相手の才能や力、関係値も必要だけど「この仕事はあなたに任せます」と言い合って信じ合うというのがなにより必要なのかなと思います。

上原:
全員に同じ物を作っている仲間だと言っています。ぶつかることもあるけど「作品を良くしたい」と同じ方向を向いてるからぶつかるんですよね。良くしたいと思う意見が自分と違うとき、人格否定されてるような気持ちになってしまうこともあるかもしれないけど、蓋ををあけてみれば、みんな同じ会社で同じものを目指している。それを忘れなければ、議論ってポジティブなことなんです。それをみんなに伝えていくことは意図的にしています。

藤澤:
二人は善人ムーブをかましてきたので、僕は悪人ムーブでいくと(笑)。
僕らの仕事って人に評価してもらってはじめて利益を得られる仕組みである以上、絶対にクオリティを追求しなければいけません。それは、逃れたくても逃れられない宿命だと思います。なので、上の人間が安易に妥協する人間になってはいけない。誰かがクオリティの番人にならなきゃいけないとき、自分がどんなに嫌われてでもクオリティのハードル下げるべきではないと思っています。結果的にそこでクオリティを保つことによってみんなが幸せに生活できるのであれば「自分は嫌われてもいいや」という覚悟をしています。「これ言ったら嫌われるだろうな」と思いながら言うこともあります。わざわざイヤな人になる必要もないけど、自分の人気取りをしないということはいつも意識しています

色んな作品をインプットをして日々勉強していますが、皆さんが良い作品を作るために取り組んでいることは?

藤澤:
仕事が好きゆえに物づくりをしすぎてインプットを疎かにしがちなのは自分の反省点です。流行っているゲームや映画をインプットしなきゃとは思うけど、僕はどちらかというとサボっています。ですが、まだ体験したことのないまったく新しいエンタメが生まれたらすぐ体験しに行きます。映画・マンガ・ゲームなど、すでにたくさん作品があるもの中で最新作を常に追っているかと言われたら、僕はあまりやっていないですね。

上原:
インプットは気が付いたらやってますが、色んなものを見ることが大切というより、自分で見て感じたことをなんでそう感じたのか言語化していくことが大切だと思います。お客様は見て満足でいいけれど、作る側なら見るだけだと足りないですね。「この感動をどうやったら再現できるだろう? どうやったら違う形で渡せるんだろう?」ということを考える仕事なので。見たものに対してどう感じたか、それはなんでなのか、と考えることが大事だと思います。

坂本:
良いアウトプット、作品作りのためにどんなインプットをしているか、ということで言えば、2つ意識していることがあります。まずは、良いものを知る・良いものに気づくことです。その良いものに対して、たとえば「なんでこの高価格でお客様の足が絶えないのか?」といった理由を考えることは習慣的にやっています。もうひとつは、感動体験の現場に自分の身を置くことです。自分自身の感動体験は、自分が作るものでどれだけ人を感動させられるかに直結します。音楽を聴いて「新しいコードワークがあるんだな」「このメロディ斬新だな」「このボーカリスト、ステキだな」とかそういう知識を得る必要もあるけど、旅行ですごい絶景を見たり、窓を開けたら信じられないくらいキレイな朝日が昇ってたり、大好きな女性とステキな所に行って感動したり……という「どれだけ自分が大きな感動体験をしたか」というのが人を感動させるうえで非常に重要な要素なんじゃないかなと思います。なので、なるべく自分がそういうところに身を置けるような行動をする努力をしています。


座談会は以上となります。
いかがでしたでしょうか?

「音楽」「物語」「企画」
それぞれ職業のジャンルは異なるように思えますが「良いものを作りたい」という気持ちは共通しており、その垣間見える情熱に私も身の引き締まる思いでした。

ゲーム業界を志す方にもこの熱意が伝われば幸いです。
ストーリーノート公式Xでは今後も採用含む最新の情報をお届けしますので、ぜひフォローをお願いします。

以上